相続税申告(相続発生後)
相続税についてお悩みの方へ
1 相続税の悩みどころ
相続税には、他の税金と比較して、様々な悩みどころがあります。
中でも、特に重要なのは、財産を所有していた人自信は、すでに亡くなっているという点にあるでしょう。
所得税でしたら、財産を所有している人自身が申告するのですから、必要な情報は、基本的には、本人の記憶をたどれば確認することができます。
他方、相続税については、財産を所有していた人はすでに亡くなっていますので、申告を行う相続人等が、申告するのに必要な情報を取得できるかどうかが問題になりやすいです。
2 相続財産の内容の把握
最初に問題になるのは、どのようにして相続財産の内容を把握するかです。
相続人が生前から財産の管理を行っていた場合でしたら、相続人が相続財産を把握していることもありますが、そうでなければ、最初から、相続人が相続財産の内容を把握していることは、意外に少ないです。
このため、相続開始後は、最初に、相続財産の調査を行う必要があります。
もっとも、調査によって、すべての財産に関する十分な情報が得られれば良いですが、現実には、断片的な情報しか得られないことが多いです。
このため、断片的な情報から、財産の所在を推測して、さらなる調査を行う作業も必要になってきます。
このような作業を行うには、断片的な情報から、財産の所在を推測するための知識、経験が必要になってきます。
たとえば、預金通帳で、毎年、110万円の出金がなされていることが確認できた場合には、誰かに対して、毎年、生前贈与が行われていたのではないかとの推測を行うことができます。
贈与税の基礎控除額が、毎年、110万円となっていますので、基礎控除額の上限で贈与が行われることが多いためです。
このような記載から、自分以外の相続人への生前贈与の存在が明らかになることがあります。
このように、預金通帳の記載から、相続人に対して生前贈与された財産の存在を推測することができます。
3 税理士への相談の必要性
このような推測を行うことができるのは、相続税申告に何度も携わっている税理士くらいです。
相続税申告に何度も携わっている税理士であれば、過去の経験から、断片的な情報からどのような推測を行うことができるかを知っていますので、より網羅的に、財産の所在を把握することができるでしょう。
当方人も、過去の経験から、財産の所在を推測する作業を経て、申告をさせていただいていますので、相続財産の内容の把握等でお困りでしたら、当方人までご相談ください。
個人向け国債と相続税
1 個人向け国債
被相続人が個人向け国債を保有している場合には、個人向け国債も相続税の課税対象になります。
個人向け国債は、満期時期が到来すると、元本にあたる額面金額が償還されます。
また、個人向け国債は、半年に1回の頻度で、利子が発生します。
このように、個人向け国債は、財産的な価値があり、換金も可能なものですので、相続税の課税対象になることとなります。
2 個人向け国債の相続税評価(計算式)
それでは、個人向け国債の評価はどのように行うのでしょうか?
評価方法は以下のとおりです。
額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額
個人向け国債を換金すると、額面金額と経過利子を受け取ることができるものの、中途換金調整額分が差し引かれての支払となります。
経過利子相当額は、被相続人が亡くなった日までの経過利子を日割計算したものです。
中途換金調整額は、直近2回分の利子相当額により算定されます。
このような計算式を用いれば、個人向け国債の相続税評価を行うことができます。
3 個人向け国債の相続税評価(財務省のホームページ)
最近では、財務省のホームページで上記の計算結果を簡単に調べることができます。
このホームページでは、最初に、国債の種類を入力します。
個人向け国債の場合、以下のいずれかになります。
・ 固定金利型3年満期
・ 固定金利型5年満期
・ 変動金利型10年満期
次に、国債の回号を入力します。
回号が分からない場合は、同じホームページで、個人向け国債の発行時期から、回号が調べられるようになっています。
さらに次に、中途換金実施日を入力します。
相続税の場合は、被相続人が亡くなった日に中途換金をしたと仮定します。
最後に、額面金額を入力します。
これらを入力することにより表示された金額を、そのまま相続税評価額として用いることができます。
このように、個人向け国債については、少なくとも、国債の種類、発行時期、額面金額が分かれば、簡単に評価額を調べることができるようになっています。
外貨建の財産と相続税
1 外貨建の財産
相続財産の中に、外貨建の財産が存在することがあります。
例としては、外貨預金、外国株式、外国債券があります。
最近では、外貨で支払がなされる生命保険も存在します。
2 外貨建財産の相続税評価
それでは、外貨建の財産がある場合は、どのように評価を行えば良いのでしょうか?
外貨建の財産については、円換算を行った上で、相続税申告書に評価額を記載することとなります。
そして、プラスの財産については、円換算のレートは、外貨を送金し、日本円で受け取る場合のレートを用います。
これをTTB(対顧客直物電信買相場)といいます。
これらのレートは、平日の午前10時頃に、各金融機関が公表しています。
ちなみに、相続税申告書の場面ではあまりないですが、外貨建で借入を行っており、マイナスの相続債務になる場合は、日本円を送金し、外貨で受け取ってもらう場合のレートを用います。
これをTTS(対顧客直物電信売相場)といいます。
3 いつのTTBを用いるか
それでは、外貨建の財産がある場合は、どのように評価を行えば良いのでしょうか?
外貨建の財産については、円換算を行った上で、相続税申告書に評価額を記載することとなります。
そして、プラスの財産については、円換算のレートは、外貨を送金し、日本円で受け取る場合のレートを用います。
これをTTB(対顧客直物電信買相場)といいます。
これらのレートは、平日の午前10時頃に、各金融機関が公表しています。
ちなみに、相続税申告書の場面ではあまりないですが、外貨建で借入を行っており、マイナスの相続債務になる場合は、日本円を送金し、外貨で受け取ってもらう場合のレートを用います。
これをTTS(対顧客直物電信売相場)といいます。
4 TTBの調べ方
それでは、プラスの外貨建財産がある場合、TTBはどのように調べたら良いのでしょうか?
TTBは、各金融期間で異なっています。
このため、厳密には、納税義務者である相続人の取引金融機関が公表するものを利用することとなっています。
もっとも、実際には、取引金融機関といえるものがなかったり、取引のある金融機関の過去のTTBを確認できなかったりすることがあります。
このため、実際には、過去のTTBを確認できる金融機関のホームページ等で、TTBを調べることが多いです。
たとえば、三菱UFJ銀行のホームページでは、代表的な通貨の1990年以降のTTBを調べることができます。
投資信託の相続税評価
1 投資信託の種類
前提として、投資信託には、上場投資信託と一般的な投資信託とが存在します。
上場投資信託は、ETFと呼ばれることもあります。
上場投資信託は、証券取引所を通して取引される投資信託であり、証券会社のみで購入することができます。
株式と同様、証券会社を通じて買い注文、売り注文が行われ、リアルタイムで値動きをします。
一般的な投資信託は、上場していませんので、証券会社だけでなく、銀行や郵便局でも購入することができます。
1日に1回算出される基準価額に基づき、売買が行われます。
多くの投資信託は、後者の一般的な投資信託に該当します。
2 上場投資信託の評価方法
上場投資信託は、株式と同様に取引され、値動きしますので、株式と同様の評価方法が用いられることとなっています。
つまり、以下の4つの金額のうち、最も低い金額が評価額になります。
・ 亡くなった日の終値
・ 亡くなった月の終値の平均
・ 亡くなった月の前月の終値の平均
・ 亡くなった月の前々月の終値の平均
調査方法は、以下のとおりです。
① 亡くなった日の終値
ヤフーファイナンスのホームページの、時系列で確認することができます。
② 亡くなった日の終値の平均、亡くなった月の前月の終値の平均、亡くなった月の前々月の終値の平均
日本取引所グループのホームページの、月間相場表(投信等相場表)で確認することができます。
亡くなった日が土日祝日であり、取引が行われていない日である場合は、亡くなった日に最も近い日の終値を、亡くなった日の終値とします。
たとえば、亡くなった日が土曜日であり、金曜日が祝日でなければ、金曜日の終値を亡くなった日の終値とします。
亡くなった日が日曜日であり、月曜日が祝日でなければ、月曜日の終値を亡くなった日の終値とします。
亡くなった日に最も近い日が2つある場合は、これらの終値の平均をもって、亡くなった日の終値とします。
亡くなった月の終値の平均、亡くなった月の前月の終値の平均、亡くなった月の前々月の終値の平均については、小数点以下の部分を切り捨てた上で、口数を乗じる計算を行うことができることとなっています。
3 一般的な投資信託の評価方法
一般的な投資信託の評価方法は、以下のとおりです。
亡くなった日の1口あたりの基準価額×口数-亡くなった日に解約した場合の源泉所得税、住民税-信託財産留保額、解約手数料
調査方法は、以下のとおりです。
① 投資信託の基準価額
投信総合検索ライブラリーのホームページの、基準価額及び純資産総額の推移で確認することができます。
② 亡くなった日に解約した場合の源泉所得税、特別徴収される住民税
亡くなった日の基準価額と、取得価額との差額に、20.315%を乗じることによって計算することができます。
取得価額については、証券会社に確認する必要があります。
③ 信託財産留保額、解約手数料
投信総合検索ライブラリーのホームページの、目論見書で確認することができます。
信託財産留保額が設定されていることが多いですので、見逃さないようにしましょう。
投資信託の基準価額は、1万口あたり●円で記載されていることがほとんどですので、口数を乗じるときは、1万口で割り算した口数を乗じるよう注意しましょう。
亡くなった日が土日祝日であり、取引が行われていない日である場合は、亡くなった日よりも前の日で、亡くなった日に最も近い日の基準価額を、亡くなった日の基準価額とします。
たとえば、亡くなった日が土曜日であっても、日曜日であっても、金曜日(祝日でなければ)の基準価額を用いることとなります。
亡くなった日が大型連休中であった場合は、大型連休前の日の基準価額を用いることとなります。
4 MRF、MMF
これら以外には、MRF、MMFと呼ばれる投資信託もあります。
証券会社で資産運用すると、配当等がMRF、MMFに再投資されていることがありますので、よく登場します。
MRF、MMFについては、基本的には、基準価額が一定になるように設定されています。
MRFについては、1口が1円になるように基準価額が設定されています。
このため、これらの評価は、それほど手間がかかりません。
ただし、再投資によって、口数が頻繁に変動しますので、亡くなった日の口数を確認するように注意しなければなりません。
また、MMFについては、未収分配金を評価額に加算する必要があります。
これに対して、MRFについては、未収分配金が発生することは、昨今の超低金利を踏まえると、基本的にはありません。
5 まとめ
このように、投資信託は、上場投資信託か、一般的な投資信託かによって、評価方法が大きく異なります。
上場投資信託については、当月、前月、前々月の終値の平均等も用いることができ、これらを用いることで、評価額を抑えることができる可能性があります。
これに対し、一般的な投資信託については、源泉所得税、特別徴収される住民税や信託財産留保額を引き算することで、評価額を抑えることができます。
ソーラーパネル(太陽光発電設備)の相続税評価
1 ソーラーパネル(太陽光発電設備)と相続税
相続税申告にあたっては、所有しているソーラーパネル(太陽光発電設備) も相続財産として申告書に記載する必要があります。
ソーラーパネル(太陽光発電設備) は、 通常、建物と一体になっているため、財産として意識することを忘れてしまいがちです。
このため、相続税申告書を作成する際、ソーラーパネル(太陽光発電設備)を申告書に記載することを忘れてしまうことが、しばしばあります。
税理士が相続税申告を行う場合も、現地を確認せずに、固定資産税納税通知書等を見ただけで申告書を作成するというようなことを行っていると、ソーラーパネル(太陽光発電設備)の存在を見逃してしまいがちです。
このような申告を行ってしまうと、後日、税務調査になった際、建物の上にソーラーパネル(太陽光発電設備)が存在することを指摘され、相続税本税とともに、過少申告加算税や延滞税を納付しなければならないという事態に陥ってしまいます。
相続税申告の際には、ソーラーパネル(太陽光発電設備)の存在を見逃さないようにしなければなりません。
2 ソーラーパネル(太陽光発電設備)の相続税評価
ここでは、 ソーラーパネル(太陽光発電設備)の評価方法について説明したいと思います。
ソーラーパネル(太陽光発電設備)は、一般動産に該当するものとされています。
一般動産の評価においては、売買実例や精通者意見による評価が困難である場合、同種同規格の新品の小売価額から、定率法による減価償却費を減額するとの計算方法を用いるものとされています。
ソーラーパネル(太陽光発電設備)は、個別に発注し、設置がなされるものであり、市場の取引相場があるとは言い難いため、このような計算方法を用いることとなります。
①同種同規格の新品の小売価額-②定率法による減価償却額
それでは、①同種同規格の新品の小売価額は、どのように算定されるのでしょうか。
実際の評価の場面では、ソーラーパネル(太陽光発電設備)を購入・設置に要した費用をもって、同種同規格の新品の小売価額と扱うことが多いです。
このため、ソーラーパネル(太陽光発電設備)を購入・設置した際の契約書等を見つけ出し、要した費用を確認する必要があります。
契約書等がない場合には、銀行口座から業者への送金額が手がかりとなることもあります。
なお、消費税は、財産評価上の小売価額には含みませんので、購入・設置した費用を参照する場合は、消費税分を割り戻し、税抜き価額を算定する必要がありますので、注意しましょう。
次に、②定率法による減価償却額は、どのように算定するのでしょうか。
ソーラーパネル(太陽光発電設備)の場合、耐用年数省令により、耐用年数が17年と定められています。
そして、国税庁のホームページにある未償却残額表を確認し、耐用年数17年の列の、該当する経過年数の欄に記載された割合を確認します。
参考リンク:国税庁、未償却残額表
経過年数は、製造から被相続人が亡くなった時点までの期間になります。
1年未満の端数があるときは、切り上げをすることとなっていますので、実際の経過年数よりも多めに減価されることとなります。
なお、未償却残額表の17年の列の割合を転記すると、以下のとおりです。
1年→0.882 2年→0.778 3年→0.686 4年→0.605 5年→0.534
6年→0.471 7年→0.415 8年→0.366 9年→0.323 10年→0.283
11年→0.242 12年→0.202 13年→0.162 14年→0.121 15年→0.081
16年→0.040 17年→0.000
経過年数が17年を超えている場合は、0円と評価されます。
3 計算方法
それでは、ソーラーパネル(太陽光発電設備)を2012年5月に500万円で購入・設置し、2020年1月に被相続人が亡くなった場合は、どのような計算になるのでしょうか。
2012年5月から2020年1月までの期間は、7年9か月になります。
経過年数の計算上、1年未満の端数があるときは、切り上げをすることになりますので、経過年数は8年となります。
未償却残額表によると、耐用年数17年の列の、経過年数の8年の割合は0.366になります。
したがって、計算方法は以下のとおりです。
500万円×0.366=183万円
相続税申告の流れ
1 資料の取得、整理
相続税申告を行うにあたっては、最初に、資料の取得、整理を行う必要があります。
必要となる資料は、おおむね以下のとおりです。
① 不動産
固定資産税の納税通知書、登記簿、公図、地図、評価倍率表、路線価図、賃貸借契約書
② 事業用資産
確定申告書
③ 株式、公社債、投資信託
残高証明書
④ 預貯金
残高証明書(定期預金については、既経過利息が記載されたもの)、預貯金通帳
⑤ 生命保険
支払金額が記載された書類
⑥ 自動車
車検証、査定書
⑦ 債務
納付書、請求書、領収書
⑧ 葬儀費用
請求書、領収書
2 個別の財産の評価額の算定
次に、一つ一つの財産について、評価額を算定する必要があります。
財産評価の方法は、財産ごとに異なっています。
たとえば、それぞれ以下の点に留意して、評価を行う必要があります。
① 不動産
路線価地域については、路線価を参照しつつ、画地補正を行います。
倍率地域については、固定資産評価額に評価倍率表に記載された倍率を乗じます。
② 株式
相続日の終値、相続があった月の終値の平均、相続があった月の前月の終値の平均、相続があった月の前々月の終値の平均のうち、最も低い金額を用います。
③ 投資信託
相続日の基準価額を用います。
源泉所得税、信託財産留保額分を減額できる場合があります。
④ 預貯金
相続日の残高を用います。
定期預金については、既経過利息を加算します。
⑤ 生命保険金
支払われた金額を用いますが、保険金の請求日からの利息は加算しません。
3 申告書の作成・提出、納付
個別の財産の評価額を入力し、申告書を作成します。
申告書が完成したら、添付書類とともに管轄税務署に提出します。
管轄税務署は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署です。
申告書の提出期限は、相続があっことを知った日の翌日から10か月以内です。
基本的には、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内が申告期限と扱われます。
これと合わせて、相続税の納付を行う必要があります。
納付の期限は、申告書の提出期限と同じく、相続があっことを知った日の翌日から10か月以内です。
納付については、各金融機関、税務署等で行うことができます。
税理士に依頼した場合の相続財産の調査方法
1 相続税申告では相続財産調査が必要不可欠
相続税申告の際には、必ず、相続財産調査を行う必要があります。
相続財産調査が不十分なまま申告書を作成すると、申告漏れとなってしまった財産が発生してしまいかねません。
そして、後日、税務調査の対象になってしまうと、本税とともに加算税や延滞税を追加で納付しなければならなくなります。
こうした事態を避けるためには、ポイントを押さえた十分な相続財産調査を行う必要があります。
ここでは、税理士による相続財産調査のポイントを紹介したいと思います。
2 預貯金の出入金記録に着目した調査
預貯金の出入金の記録には、様々な着目すべきポイントがあります。
定期的または臨時の出入金の記載に着目すると、そこから、新たな相続財産の存在が判明することが多々あります。
過去にも、以下のような例が存在します。
通帳を確認したところ、毎月、少額ですが、「××金属」の引落がなされていた事案がありました。
「××金属」に確認したところ、生前、被相続人が、積立を行い、積立金をもって、金を購入していたことが判明しました。
積立期間が長期間に及んでいた上、金価格の高騰もあったため、金を評価したところ、かなりの金額になってしまいました。
このため、金の存在についても、申告書に反映させる必要がありました。
このように、預貯金の出入金の記録には、着目すべき様々なポイントがあります。
相続財産調査では、こうしたポイントを見逃さないようにしなければなりません。
3 相続税申告についてのご相談
このように、相続財産を調査するにあたっては、わずかな手掛かりも見逃さないようにする必要があります。
そのためには、いくつもの申告案件に関与し、相続財産調査の勘所を知っておく必要があります。
このような勘所は、一朝一夕では知ることができないものであり、相続税申告に特化した税理士でなければ、身につかないものであると思います。
当法人は、税理士が相続税申告に特化しており、数々の申告の経験を積み重ねています。
相続税申告についてご相談事がありましたら、当法人までお問い合わせください。
相続放棄をお考えの方へ
1 相続放棄を行った人にも相続税は課税される
相続放棄は様々な目的で行われています。
相続財産よりも相続債務の方が多額であり、相続財産が債務超過になっている場合に、相続放棄が行われることがあります。
他にも、相続権を有する人を少なくし、相続手続を簡略にするために、相続放棄が行われることもあります。
相続放棄を行った人は、はじめから相続人ではなかったものと扱われるため、相続財産そのものを取得することはありません。
このように、相続財産を引き継ぐことはないため、相続財産に課税される相続税を負担することはありません。
ところが、相続税は、相続財産だけでなく、生命保険金にも課税されています。
このため、相続放棄を行った人が、生命保険金の受取人になっていた場合には、生命保険金に課税される相続税を納付しなければならないこととなります。
したがって、相続放棄を行ったとしても、生命保険金の受取人になっていた場合には、相続税を納付しなければならないこととなります。
2 相続放棄を行うと、課税される相続税が増額される
相続放棄を行う場合には、注意しなければならないことがあります。
それは、相続放棄を行うと、生命保険金について課税される相続税が増額されるということです。
生命保険金については、相続税の非課税枠が存在します。
受け取った生命保険金のうち、500万円×法定相続人数までは、相続税が課税されないこととされています。
ここでは、被相続人に子が2人いる場合を考えたいと思います。
この場合、相続税の非課税枠の総額は、500万円×2人=1000万円となります。
このとき、相続放棄を行った相続人がいる場合は、相続放棄がなされなかったと仮定して法定相続人数がカウントされることとなります。
先の例で、子のうちの1人が相続放棄を行ったとしても、相続放棄がなされなかったと仮定して法定相続人数がカウントされることとなりますので、法定相続人数は2人であり、相続税の非課税枠の総額は1000万円になります。
次に、上記の非課税枠を、誰が利用することができるかについて説明したいと思います。
上記の非課税枠は、相続放棄を行わなかった相続人しか利用できないこととなっています。
このため、先の例ですと、相続放棄を行わなかった相続人だけが非課税枠を利用することができ、相続放棄を行った相続人は非課税枠を一切利用することができないこととなります。
相続放棄を行わなかった相続人が受け取った生命保険金が1000万円に満たない金額であり、非課税枠に余りがあったとしても、その余りを相続放棄を行った相続人が利用することはできません。
このため、相続放棄を行わなかった相続人は、非課税の利用により、相続税が大きく軽減される可能性がある反面、相続放棄を行った相続人は、非課税枠を利用できず、生命保険金に課税される相続税をすべて納付する必要があることとなります。
3 相続放棄の際は相続税についても検討しましょう
このように、相続放棄を行うか行わないかで、生命保険金に課税される相続税が大きく異なる可能性があります。
手続を簡略にしたいという思いだけで相続放棄を行ったとしても、結果的に、課税される金額に大きな差が生じる可能性があります。
相続税の課税対象になる場合は、相続放棄を検討するにあたっては、相続税の負担への影響も考慮するのが望ましいでしょう。
相続税について税理士に相談すべきケース
1 相続税が課税される場合
相続税が課税される場合については、税理士にご相談いただいた方が良いでしょう。
相続税は、相続財産の合計額から相続債務、葬儀費用を差し引いた金額が、以下の金額を超える場合に課税されます。
※ 相続開始前3年以内に贈与された財産、生命保険等、相続財産の総額に加算される財産も存在します。
3000万円+600万円×法定相続人数
たとえば、法定相続人が子2名のみでしたら、相続財産の合計額から相続債務、葬儀費用を差し引いた金額が4200万円を超える場合に、相続税が課税されることとなります。
相続財産の合計額を算定するにあたっては、財産基本通達で定められたルールに基づき、個別の財産の評価額を算定する必要があります。
特に、土地については、評価方法によって大きく評価額が変わってくることがありますので、注意が必要です。
また、預貯金や有価証券については、被相続人の名義になっていなかったとしても、相続財産として扱うべき場合もあります。
このように、相続財産の合計額の算定にあたっては、専門的な知識が必要になる場面がありますので、税理士にご相談いただいた方が良いでしょう。
2 特例を用いることにより相続税が課税されなくなる場合
配偶者が取得した相続財産については、一定額までは、相続税が課税されないこととなっています。
これを配偶者の税額軽減と言います。
また、一定の宅地については、限度面積までは、評価額を5割または8割減額できることとなっています。
これを小規模宅地等の特例と言います。
このような特例を用いることにより、相続税が課税されなくなることがありますが、この場合には、申告をしなければならないこととなっています。
相続税申告を行ったことを条件として、これらの特例を用いることができることとなっているからです。
このような相続税申告を行うにあたっては、通常の場合と同じく、きちんと申告書を作成する必要があります。
きちんとした申告書を作成するためには、税理士にご相談いただいた方が良いでしょう。
相続税について税理士に相談するタイミングとは
1 税理士に相談するとよいタイミング
相続税について税理士に相談する場合は、どのタイミングで相談を行えば良いのでしょうか?
結論から述べますと、相談は早ければ早い程、メリットがあるということになります。
相続税には、申告書の提出と税金の納付の期限が設けられています。
申告書の提出も、税金の納付も、被相続人が亡くなったことを知ってから10か月とされています。
この期限を過ぎてしまうと、相続税の本税だけでなく、加算税や延滞税も納付しなければならなくなってしまいかねません。
そして、期限までに申告と納付を行うには、十分な準備を行う必要があります。
以下では、具体的に、期限までにどのような準備が必要かを説明し、早期の準備を行うことの重要性を説明したいと思います。
2 相続税の納付の準備
先述しましたとおり、相続税は、被相続人が亡くなったことを知ってから10か月以内に納付する必要があります。
相続税の納付は、金銭での一括払いが原則です。
金銭で一括払いができない場合は、特段の手続を行わなければ、相続税が未納となってしまい、延滞税が発生することとなります。
このため、基本的には、被相続人が亡くなったことを知ってから10か月以内に、相続税の額に相応する金銭を準備しなければなりません。
相続財産に預貯金や有価証券が含まれている場合は、これらを相続税に充てることができます。
もっとも、このような場合であっても、預貯金を払い戻したり、有価証券を換金したりする手続を行わなければなりません。
そして、このような手続を行うためには、原則として、相続人全員の同意が必要となります。
このように、相続人全員の同意を得て、払戻や換金の手続を行うには、ある程度の時間を要します。
前提として、相続人全員の意見を調整する必要がありますし、金融機関や証券会社での書類作成、内部処理の手続も必要になります。
他方、相続財産に十分な預貯金や有価証券が含まれていない場合には、さらに問題が生じます。
この場合には、相続した不動産を売却し、売却代金を相続税に充てなければならないことも起こり得ます。
このような不動産売却を初めから行うには、最短でも2から3か月の期間を要します。
不動産の買い手がなかなか見つからなく、さらに期間を要することも多いでしょう。
以上の手段を用いても相続税に相応する金銭を準備できない場合は、自己資金から相続税を納付するか、延納や物納の手続をとる必要があります。
延納や物納の手続をとる場合にも、必要な準備があり、税務署の許可も得る必要があり、時間が必要になります。
このように、納付の準備1つをとっても、様々な準備が必要になります。
余裕をもってこうした準備を行うためにも、早めに税理士にご相談いただいた方が良いでしょう。
不動産評価に強い税理士に評価すべき理由
1 不動産評価に強い税理士
不動産の評価は、税理士によって結果が大きく異なります。
不動産の評価額は大きい金額になることが多いですので、個々の税理士で、算定される相続税の額も大きく異なってくることとなります。
妥当な評価額に基づいて相続税を納付するためにも、不動産評価に強い税理士に依頼することが重要であるということができます。
ここでは、税理士によって不動産評価が大きく異なった例を紹介し、相続税申告での不動産評価の重要性を説明したいと思います。
2 不動産評価が大きく異なった例
この例では、路線価地域にある宅地について、評価額を算定する必要がありました。
当初、税理士は、その宅地について、路線価に地積を乗じ、不整形地補正率をかけ算することにより、評価額を算定しました。
その後、宅地の現地調査を行ったところ、宅地に隣接して、法面(傾斜している土地)が存在していることが判明しました。
さらに、県庁で確認を行ったところ、その宅地が、土砂災害特別警戒区域に指定されていることが判明しました。
土砂災害特別警戒区域に指定されている土地については、建物の建築が制限されますので、評価額が下がることとなります。
路線価に基づいて評価を行う際にも、1割から3割、評価額を減額できることがあります。
このような公法による建物建築の規制については、路線価評価する際に減額の要因となることがありますが、見逃されがちな部分でもあります。
特に、土砂災害特別警戒区域についての路線価評価の定めは、平成31年以降に設けられたものであるため、最新の通達を把握していなければ、見逃してしまう可能性があります。
このように、詳細な通達を含めて評価を行うことにより、妥当な金額での相続税納付が可能になります。
こうした詳細な通達を把握している、不動産評価に強い税理士に相談すべきであると言うことができます。
相続税で困った場合の相談先
税金の問題というと、税理士や税務署を思い浮かべると思います。
相続税の申告をしなければならない場合は、どの専門家に相談すれば良いのでしょうか?
1 税務署
相続税の申告書を作成し、提出する場合は、税務署に提出します。
また、相続税が課税されるのに申告書が提出されなかった場合や、申告書に誤りがある場合は、税務調査がなされる可能性がありますが、この場合も、税務署が動くことが多いです。
それでは、相続税の申告をしなければならない場合は、税務署に相談すれば良いのでしょうか?
結論を先に述べると、相続税の場合は、税務署に相談して申告書を作成することはお勧めできません。
税務署での相談は、限られた時間内での相談になり、回答も、一般的な事項についての回答に限られます。
相続税の申告書を作成する際には、個別の財産について評価額を算定し、税額の計算をしなければなりませんので、一般的な事項について限られた時間での回答を得ただけでは、到底、申告書を作成することはできないでしょう。
結局は、税務署の回答を持ち帰り、自分で個別の財産についての調査を行った上で、自分で申告書を作成しなければならないこととなるのです。
このように、相続税については、税務署に相談したとしても、申告書を作成することは困難でしょう。
2 税理士
相続税の申告をしなければならない場合は、税理士へのご相談をお勧めします。
税理士にご依頼いただいた場合は、税理士の側で、個別の財産についての調査を行い、税額の計算も行い、申告書を完成させることとなります。
また、税理士にご相談いただければ、小規模宅地等の特例等、税額軽減の制度の適用の可否についても、アドバイスをいたします。
さらに、税理士によっては、二次相続等、今後の財産の承継も視野に入れて、最も税負担を軽減できる相続はどのようなものであるかについても、アドバイスをしてくれる場合があります。
これらのメリットは、税理士にご相談いただいた場合の固有のメリットだと思います。
3 税理士にご相談いただく場合の注意点
ただ、税理士によっては、相続税をわずかしか取り扱ったことがないということもあり得ます。
やはり、相続税に特化した税理士の方が、より適切な申告を行い得るということができます。
この点は、どの税理士に相談するかを選ぶ際の、1つの判断材料になると思います。
相続税を依頼する場合の税理士の選び方
相続税を依頼する場合の税理士の選び方のポイントとしては、以下のものがあります。
1 通達、過去の取り扱いを熟知していること
相続税については、財産の評価方法、税額の計算方法、税額軽減の制度等、様々なルールが定められています。
このようなルールは、相続税法だけでなく、通達や過去の取り扱いで詳細に固められています。
このように、通達や過去の取り扱いを熟知していなければ、適切な相続税の申告を行うことはできません。
たとえば、相続放棄をした相続人が、生命保険金を受け取り、相続税が課税されることとなった場合、以下の点はどのようになるのでしょうか?
- ① 相続放棄をした人は、生命保険金の非課税枠を使えるのでしょうか?
- ② 相続放棄をした人が被相続人の医療費を支払った場合、債務控除を用いることはできるのでしょうか?
- ③ 相続放棄をした人は、未成年者控除を用いることはできるのでしょうか?
これらの点を正確に答えられる人は、税理士でも少ないでしょう。
これらの点に正確に答えるには、通達や過去の取り扱いを熟知している必要があります。
このように、相続税については、税理士の中でも、通達や過去の取り扱いを熟知している人に依頼するのが良いでしょう。
2 最新の規定をキャッチアップしていること
相続税については、毎年のように、規定の変更がなされています。
このため、過去の規定では税額軽減の対象であったのに、最新の規定では税額軽減の対象にならないといったことがあり得ます。
にもかかわらず、過去の規定に基づいて相続税の申告をしてしまうと、誤った申告を行ったこととなり、加算税や延滞税の対象になる可能性があります。
たとえば、小規模宅地等の特例について、かつては、過去3年間に、自分名義または配偶者名義の居宅に居住したことがない相続人は、いわゆる家なき子に該当し、宅地の評価額を8割減じる特例を用いることができました。
ところが、平成30年度の税制改正により、過去3年間に、3親等以内の親族名義や特別な関係のある法人名義の居宅に居住していた人については、宅地の評価額を8割減じる特例を用いることができないこととなりました。
こうした最新の規定をキャッチアップしていなければ、正確な相続税の申告を行うことはできません。
このように、最新の規定を把握するには、普段から、相続税に関する改正にアンテナを巡らせておくことが必要不可欠です。
3 相続税を依頼する場合の税理士の選び方
このように、通達、過去の取り扱いを熟知し、最新の規定をキャッチアップするためには、普段から、相続税の案件を集中的に担当していることが必要不可欠でしょう。
他の税目の合間に、スポットで相続税の案件を受けているのみですと、こうした知識に漏れが生じるおそれもあります。
相続税を依頼する税理士を選ぶ際には、専門特化を行っているかどうか等を判断基準にすることができるでしょう。
税理士による相続税の申告のための不動産の調査
1 相続税の申告のための不動産の調査
相続税の課税対象となる財産の中で、大きな割合を占めているのが、不動産です。
相続税の申告の場面では、不動産について、必要な調査を尽くし、適切な評価を行うことができるかどうかが勝負になってきます。
ここでは、不動産を調査する際のポイントを何点かまとめたいと思います。
2 不動産の一覧を網羅的に把握する
相続税の申告を行う際には、被相続人名義の不動産の一覧を、網羅的に把握しなければなりません。
被相続人名義の不動産の一覧は、毎年4月から5月に届く固定資産税納税通知書、市町村役場で発行される名寄帳(固定資産課税台帳)で確認することができます。
ただ、ここで注意しなければならないことがあります。
それは、被相続人が誰かと共有していた不動産については、被相続人が単独で所有していた不動産とは別に、固定資産税納税通知書が届くということです。
また、被相続人以外の共有者が固定資産税を代表して納付していた場合は、被相続人宛に固定資産税納税通知書が届きません。
このため、被相続人が誰かと共有していた不動産については、固定資産税納税通知書を確認するだけだと、判明しないおそれがあります。
被相続人が誰がと共有していた不動産についても、その不動産の持分に相続税が課税されることとなりますので、このような不動産を見逃すと、申告漏れになってしまいます。
市町村役場で名寄帳(固定資産課税台帳)を取得する場合も、被相続人が誰かと共有していた不動産については、別に作成されることとなりますので、窓口で、共有不動産の名寄帳(固定資産課税台帳)を取得する必要があることを伝えた方が確実でしょう。
同様の問題は、被相続人の先代名義になっている不動産についても生じます。
3 土地の実際の面積、形状を把握する
土地のおおむねの形状や面積は、登記簿や固定資産税納税通知書、公図、地積測量図を取得することで確認することができます。
もっとも、これらの公的記録では、土地の実際の面積や形状を正確に把握できないことも、しばしばあります。
これは、特に、昭和50年代よりも前に作成された図面等については、信頼性が乏しいためです。
たとえば、土地の面積について、現地で確認すると、登記簿や固定資産納税通知書に記載された面積よりも小さいことが判明することがあります。
このような場合に、登記簿や固定資産税納税通知書に記載された面積のままで評価額を算定すると、本来の評価額よりも高い算定結果になってしまいます。
このような事態を避けるためには、土地の現況を申告内容に反映する必要があります。
たとえば、公図や地積測量図と土地の航空写真とを重ね合わせることで、土地の現況に基づく面積や形状を把握する方法を用いることが考えられます。
他にも、費用が必要になりますが、土地家屋調査士に測量を依頼し、土地の正確な現況の図面を作成してもらう方法を用いることも考えられます。
税理士による相続税の申告のための金融資産の調査
1 相続税の申告のための金融資産の調査
相続税の申告に際しては、相続財産を網羅的に調査する必要があります。
このような調査の結果判明した相続財産については、申告書に漏れなく記載しなければなりません。
後日、申告書に記載のない相続財産の存在が判明すると、税務調査の対象となり、追加で納税しなければならないばかりか、加算税や延滞税を納付しなければならなくなるおそれがあります。
相続税の申告では、どれだけ財産の調査を網羅的に行うことができるかが勝負であると言えます。
以下では、金融資産の調査方法について、具体的に、いくつかのポイントを挙げたいと思います。
2 自宅に残された手がかりを見逃さない
相続の時点では、相続人が、どのような相続財産が存在しているかを把握していることは、希であると言えます。
このため、多くの場合、相続人は、被相続人の自宅に残された手がかりに基づいて、金融資産の調査を始めることとなります。
株式や投資信託の取引についても、自宅に定期的に届く取引残高報告書が手がかりになることが多いでしょう。
生命保険についても、自宅に残された保険証券が手がかりとなるでしょう。
損害保険の保険証券についても、解約返戻金が発生することがありますので、注意が必要です。
こうした手がかりを見逃さないためには、被相続人の自宅に残された手がかりを、綿密に調査する必要があります。
3 配当金や分配金、端株に注意する
株式や投資信託については、申告書の作成の難易度は高くないと言われることがあります。
これは、証券会社に問い合わせれば、被相続人が保有していた株式や投資信託の内訳が記載された取引残高報告書を発行してもらえるからです。
証券会社によっては、各銘柄の相続税評価額を記載した書類を発行してくれることもあります。
しかし、現実には、株式や投資信託については、証券会社の書類を転記しただけだと、申告漏れが生じることがあります。
たとえば、上場株式については、現在では、証券会社を通して取引がされますが、平成20年以前から保有しており、単元株に満たなかっか株式については、証券会社に取引が引き継がれず、証券会社の残高報告書にも記載されることがありません。
このような株式は、口座への配当金の入金や配当金領収証の記載を精査することで、存在を確認することができます。
このように、証券会社が発行する書類に記載のない部分については、申告漏れが生じがちですので、注意しなければなりません。