相続税の除斥期間(時効)待ちは有効か
1 除斥期間(時効)とは
相続税の除斥期間(時効)は,申告期限の翌日から5年または7年とされています。
意図的に申告しなければならないのに申告しなかった場合,意図的に本来の税額よりも低い税額を申告した場合は7年の除斥期間(時効)となり,そうではない場合は5年の除斥期間(時効)となります。
そして,除斥期間(時効)が経過すると,相続税の申告,納付の義務が消滅します。
端的にいうと,5年または7年の期間が経過すると,相続税を納付しなくても良いこととなります。
2 除斥期間(時効)を待つのは難しい
このような話をすると,仮に相続税の申告,納付をしなければならないとしても,申告期限から7年間,税務署から何もいわれなければ,相続税を免れることができるのではないかと考えてしまうかもしれません。
しかし,現実には,税務署から何もいわれずに7年の期間をやり過ごすことは,困難であるといわれています。
税務署は,市町村の課税台帳から大地主を把握したり,毎年の所得税の確定から高額所得者を把握したりしており,生前から,相続税が課税される可能性のある人をチェックしています。
また,相続後に,不動産の名義変更がなされると,法務局から税務署に対する情報提供がなされますし,生命保険金や死亡退職金の支払がなされると,税務署に支払調書が提出されます。
このため,多額の資産保有やその相続について,税務署に気づかれないようにすることは,かなり困難です。
このため,いずれは,税務調査がなされ,課税処分がなされることとなると思っておいた方が良いでしょう。
3 相続税申告の除斥期間(時効)を待つデメリット
加えて,申告すべきなのに申告しなかった場合に課税処分がなされると,本税の15~20%の無申告加算税が課税されます。
また,申告期限から納付がなされるまでの期間の本税について,始めの2か月間は年2.6%の,その後は年8.9%の延滞税が課税されます。
さらに,隠蔽または仮装がなされていたと判断された場合には,40%の重加算税と,上記と同じく延滞税が課税されることとなります。
このように,結局,税務調査がなされることとなった場合には,相続税の本税だけでなく,加算税や延滞税の負担も生じることとなります。
このことからも,除斥期間(時効)待ちは,基本的には狙うべきではないということが分かります。
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