固定資産税の債務控除
1 固定資産税は債務控除の対象になる
被相続人が亡くなった時点で負っていた債務については,相続財産から差し引きすることができます。
これを債務控除といいます。
相続財産から差し引きすることができれば,相続税の額も減額されることになりますので,債務控除の対象になる債務がないかを,しっかりと確認したいところです。
被相続人が不動産を所有していた場合,その不動産に課税される固定資産税も,被相続人が亡くなった時点で負っていた債務になり得ますので,債務控除の対象になる可能性があります。
ただ,固定資産税を債務控除する場合には,どこまでが債務控除の対象になるかを正確に検討する必要があります。
2 債務控除の対象になる固定資産税
固定資産税の納付期限は,市町村によっても異なりますが,おおむね,第1期分がその年の5月,第2期分がその年の7月,第3期分がその年の12月,第4期分が翌年の2月になります。
このように分かれて納付期限が到来する固定資産税は,どこまでが,債務控除の対象になるのでしょうか?
債務控除の対象になるのは,被相続人が亡くなった時点で負っていた固定資産税です。
相続税申告の場面では,固定資産税は,毎年の年初の1月1日時点での所有者に課税されると考えます。
このため,被相続人がいつ亡くなったとしても,その年の年初の1月1日時点ですでに固定資産税の課税対象になっていたこととなりますので,その年分は固定資産税のうち未納であるもののすべてが債務控除の対象になります。
たとえば,被相続人が2020年1月2日に亡くなったとしても,2020年分の固定資産税のすべてが債務控除の対象になります。
もちろん,債務控除の対象になるのは,あくまでも,亡くなった時点で未納付だったものになりますので,被相続人が生前に納付していた固定資産税については,債務控除の対象にはなりません。
特に,注意しなければならないのは,固定資産税の全期分(第1期分~第4期分)の納付がなされている場合です。
固定資産税については,4月~5月に,その年分の固定資産税の全期分(第1期分~第4期分)の納付を行うことができます。
このため,被相続人が4月~5月に,全額分(第1期分~第4期分)の納付を済ませ,そのあとに相続が発生することがあります。
このような場合には,その年分の固定資産税は債務控除の対象にはなりません。
誤ってその年分の固定資産税を債務控除してしまうと,過少申告になってしまいます。
被相続人が1月~2月に亡くなった場合も,注意が必要です。
この場合は,まだ,その年分の固定資産税の納付期限が来ていませんので,その年分の固定資産税の全額(第1期分~第4期分)が債務控除の対象になります。
加えて,前年分の固定資産税のうち,第4期分が未納付である可能性があります。
このように,被相続人が1月~2月に亡くなった場合には,2年分の固定資産税が債務控除の対象になることがあります。